昨夏のある台風の翌日、この日はいつになく暑かった。
立ち眩みする暑さの中外へ出ると、我が家の敷地で暑さを凌いでいる1匹の黒猫がいた。
ブロック塀にピッタリ体をくっつけ、ブロック塀によってできたほんの少しの日陰に、だらーんと体を細長くして入っていた。
この炎天下で黒い毛並みはつらいやろ。。。
それにしても、綺麗な顔してる。
炎天下の中、凛と際立つこの黒猫がとても印象的だった。
この黒猫「くぅ」は、今我が家で暮らしている。
触ることができない状態で保護したた為、心が折れそうになる毎日。
それでも、保護してから3ヶ月めには、少しずつ落ち着き始めた。
高窓ばかりにいたくぅも畳で過ごすことが増え、安心しきった寝相も御披露目してくれるようになった。
この時は、きっとくぅは幸せだと、保護して良かったと本当に思った。
こうやって、穏やかに新たな元号がスタート。
令和元年を迎えた5月、その最後の日曜日に事件が起きた。
朝起きると、くぅの息がはぁはぁと荒く舌を出し、何かを訴えるように鳴きまくり、うろうろしていた。
少しでも近づくと、シャーシャー威嚇する。
先住猫との絡みもあり、6畳の床の間の部屋をまるごとゲージのような状態にして、くぅはそこで生活していた。
この部屋にはエアコンがなく、3日後にエアコン工事の予定が入っていた。
他の部屋ではまだエアコンを使用してなかったし、網戸にしてたので、あと3日エアコンなしでも大丈夫だと思い込んでいた。
でも、黒い毛並みのくぅには、もっと早くからエアコンが必要だったのかも知れない。
ここ数日のひなたぼっこで、体温が上がってしまったのかも。
熱中症かも知れん、とにかく早くここから出さな‼️
でも、触らせてもらえないので抱っこもできない。
体を冷やす処置もできない。
一刻も早く、くぅをエアコンの部屋へ移動させなければならなかった。
2階の部屋をエアコンガンガンにして、くぅを誘導させようとしても怯えて動かない。
捕まえて病院へ連れていこうとしたりもしたが、逃げまくる。
結局、一刻を争うので猫じゃらしでつついたりして、追いやるようにして無理矢理2階の部屋へ移動させた。
そして、無理矢理スプーンで水を口周りにつけて、自ら舐めるようもっていった。
あとは、水とごはんを置いておき、暗くしてそーっとしておくしかなかった。
無理を言って、前倒しでエアコン工事をしてもらえることになり、夜にはエアコンがついた。
今度はまた無理矢理追うように、元の部屋へ移動させた。
ここからが、大変だった。
この無理矢理の移動によって、保護した当初に逆戻り。
くぅはまた、私たちを恐怖の目で見るようになってしまった。
やっと落ち着きを見せ始めていた矢先のこと、ショックは大きかった。
ごはんを食べなくなり、近づくとフーッと威嚇するようになってしまった。
また畳に降りてこなくなり、高窓でうろうろしながら鳴きまくる毎日。
その鳴いてる姿を見ていると、、、
なんでこんなとこにいなあかんの、出して、出して、帰りたい。
保護したことを、責められてるような気がした。
元の野良猫に戻してやるべきか。。。
猛暑の中、ブロック塀の小さな日陰で暑さを凌いでいたくぅを思い出しては、やっぱり戻せないと葛藤し。。。
そして、ついこの間まで幸せそうに安心しきって眠っていたという事実が、よけい決断を鈍らせた。
くぅの捕獲と手術諸々をお願いした、「野良猫さんの手術室」に相談してみた。
怖くないとまた理解し安心するまでには、またそれなりの時間が必要、もう少し様子を見た上で決めた方が良いのでは、とのことだった。
それからは、迷いを抱えつつも、あれやこれやと試行錯誤の毎日を過ごした。
そーっとしたり気を引いてみたり、ごはんも変えてみたりふりかけをかけてみたり、日光が当たりすぎないよう簾をしたり。
少しずつごはんも食べ始め、鳴きまくることもフーッと威嚇することもだんだん減っていった。
そうしているうち、私の迷いも薄れていった。
もうひとつ、大きく変化したことがある。
あの騒動以来、夜9時から11時の間「くぅの探検タイム」とすることに。
夜ごはんの時間を早め、長風呂を封印し、急いでお風呂から上がると同時に、床の間のフェンスを開放。
くぅに襲いかかったことのあるおちびだけ、今はまだはち合わせないよう工夫している。
あれから1ヶ月。
最初は、ビクビクしながら床の間から出てきてたくぅも、最近では私のお風呂上がりが待ち遠しい様子。
ちゃっかり畳の上でスタンバイ。
床の間から出てきて、廊下で寝転んだりするようにもなった。
こめとの距離も、縮まってきている。
雨降って地固まる。。。
うーん、固まりつつあると言うか。。。
いい感じに変化しつつある。
見てる方がじれったくなるほど勇気が出なかったこめも、そのうちくぅと追いかけっこしたり、一緒におやつを食べたりもするようになった。
難関は、以前くぅに飛びかかったおちびとの関係。お互いに害がないことを理解するまで、時間が必要かとは思う。
そして昨夜は、くぅの為に用意していたベッドで初めて寝ていた。
足だけを入れて、上半身は外。
「試しにちょっとだけ寝てみた」と言わんばかり。
こうして初めて私にも、この1ヶ月を振り返る余裕が出てきたといったところ。
こういった日々の出来事が積み重なるにつれ、迷いも薄れていき、私のリュックが少し軽くなってきたような。
それでも、くぅを保護して良かったのか、自由気ままな生活から家の中に閉じ込められて、くぅは幸せなのか、その答えはまだまだ出そうにない。
これから先も色んなことにぶつかり、そのたび悩んだり迷ったりするのだと思う。
くぅがこの家で自分の居場所を確立し、穏やかに安心して暮らせるようにサポートしていく以外、やっぱり今は思いつかない。
次のお正月は、くぅをコタツで迎えさせてやりたいと、保護前と変わらず思う。
私の思いが、この先くぅの幸せに繋がってくれるようにと祈るしかない。
保護から家猫までの道のりは、山あり谷あり、どこが終着点かわからない。
くぅにとっても、本当に大変なことだと思う。
それでも、一緒に歩いていくしかない。
休憩しながら、お茶のみながら、ぼちぼち歩こうかな。
くぅの脱野良猫生活は、まだまだ始まったばかり。
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